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前回の記事でGrassyCoreについて触れたので,今回は続いて同じネタでボルクスジャパンのスポットライトLED,GrassyLeDioシリーズについて水草水槽目線でまとめておきます.

GrassyLeDioシリーズ

GrassyLeDioシリーズはボルクスジャパンが長く発売しているスポットLED照明で,もとは海水水槽用の照明(サンゴ用)として発売されていたものです.よくあるフラット形状のLEDとはことなり,E26口金にセットして使います.照射範囲が非常に限られている代わりに遠くまで強い光を届けることができるのが特徴で,これによって深い水槽でも水槽の底でも光があまり減衰せずサンゴや水草をよく育てられます.大体1灯だと30センチキューブくらいが照らせる範囲ですね.

使っているLED素子がいわゆる高出力LEDなのが最大の売りで,UVを含むスペクトルにも拘っています.これらの要素は特にサンゴ飼育では重要みたいですね.水草は普通の白色LEDでも育ってしまうのであまり恩恵がないように思いますが,今までの経験上はやはり成長速度や発色はGrassyLeDioの方が勝る印象です.あと演色性が高いので鑑賞面でも自然な色で楽しめます.

また,別売りのBluetooshユニットによって簡単な調光,調色に対応しているのも特徴です.とはいえシステムLEDに比べると調整できる範囲は限られますが,ないよりはマシです.例えば陰性水草主体の水槽を作るときには出力を落とす,というような運用が可能です.調光ユニットを利用しない場合100%で点灯します.これが重要で,後述するGrassy Core/Solarはアプリに繋がらないと絶対に点灯できない仕組みになっており,それと比べると万が一調光制御部が故障しても(あるいは修理期間が終わっても)LEDさえ生きていれば単体だけで機能します.1

microUSBソケットに別売りのユニットを差し込んで利用

近年淡水水槽用のものも発売されていて,私も所有しています.最近追加で購入しようと思ったら知らないうちに色々と新機種も発売されていたようなのでどんな機種があるのかまとめようというのがこの記事の趣旨です.

機種一覧

ここではここ5年くらいで発売された淡水用に絞って話を進めていきます.GrassyLeDioシリーズはとにかく型番がわかりにくいですが,大きくわけて20Wクラスの高出力タイプと,10Wクラスの中出力タイプの二つに分かれていると考えればわかりやすいです.高出力タイプはRX122とRX122sの二つ,中出力タイプはRX072e,RX201,RX121sの三つです(RX122cは海水用だけのため除外).また,各機種でLED素子の違いで何種類か発売されていることもあって,淡水用だと8000K程度のものと3000K程度のものが出ていることがあります.

消費電力など

まずは消費電力などを機種ごとにまとめておきます.

機種名 発売日 消費電力 ビーム角 寸法(mm) 重量(g) 調光 値段(円)
RX122 2016/11/20 23 W 60°±10% Φ120*127 445 1ch 20697
RX122s 2022/6/15 23 W 60°±10% Φ120*127 445 2ch 20482
RX072e 2020/11/02 14 W 50°±10% Φ95*105 250 なし 10039
RX201 2020/12/16 18 W 80°±10% Φ120*127 445 1ch 14876
RX121s 2021/12/22 13 W 60°±10% Φ95*105 299 2ch 13798

値段は公式通販の参考価格ということでクラスの違いの参考程度にしてください.チャームなどでもっと安く売っているはずです.とはいえ全体的に値段は高く,ここにさらにソケット代やBluetoothアダプタ代が追加されることを考えると決して安くはない照明です.以前はもう少し安かったのですが値上げもあったんでしょうね.1~2万円あれば90センチ水槽をカバーできるような照明を揃えられるので,正直趣味の領域と言われればその通りです(笑.しかし,バータイプのライトは特定の水槽サイズでないと使えませんが,スポットLEDやシステムLEDは水槽サイズを選ばずに使えるという大きな利点があります.私のように引越しなどで頻繁に水槽サイズを変える人にとっては良い選択肢だと思っています.

筐体自体はRX122/RX122s/RX201,RX072e/RX121sで共通なのかサイズは一緒になっていますね.前者がより高出力の製品群です.その中でもRX201は出力が低い代わりに照射角度がより広くなっていて,設計思想の違いを感じさせます.RX201は公式ページで「LED素子の集合チップ化による嬉しいコストダウンを図ることで実現した、レディオファンのためのお手軽リアルスペクトルLED」と表現されており,値段もRX121sなどと近いものとなっています.

RX072e/RX121sは筐体がより小型で出力が小さいので小さい水槽やメイン照明の補助に使われている印象があります.正直淡水用ならこっちのシリーズで十分かなと感じることもあります.RX122で強度100%だと水面付近にある陰性水草は焼けることもあるので... 筐体サイズは普通のE26用LEDのことを考えるといずれも大きいですが,巨大な放熱フィンがついているのでこれ以上は小さくならないのでしょうね.このおかげか使用中にあまり熱くならないのは安心材料です.

調光が1chと2chとありますが,古い機種では光の強さしか調整できなかったところ,新しいRX121sとRX122sでは2chをいじることができるようになっており,文字通りの調光ができるようになった,という意味です.RXシリーズの中で唯一,RX072eは調光には対応していないので注意が必要です.

スペクトルについて

使われているLED素子や色温度などについてもまとめておきます.淡水用としては大体freshとsunsetという二種類のものが当てはまります.freshが通常の淡水用照明,sunsetは赤みが強い照明です.水草水槽でメインの照明として使っていくにはfreshが無難かなと思います.

  RX122 fresh RX122 sunset RX122s fresh RX121s fresh RX201 fresh RX201 sun RX072e fresh RX072e sunset
相関色温度(K) 9000 3000 8000 8000 8000-9200 6000-6700 12000 3300
演色性(Ra) 95 85 95 93 92 97 91 67
PPFD(μmol/m2/s)@30cm 530 550 560 436 286 234 265 124
JIS照度(lx)@30cm 28930 25470 32900 22560 16450 13060 16073 7222
簡易照度(lx)@30cm 29000 20600 35700 26240 18540 14610 16070 9710
素子構成 UV
Violet
Blue
Cyan
CoolWhite4
NeutralWhite
WarmWhite3
UV
Violet
DeepRed
NeutralWhite2
WarmWhite7
UV
Violet
Blue
CyanBlue
CoolWhite5
WarmWhite
SpecialWhite3
- - - Blue
Green
CoolWhite3
WarmWhite2
UV
Violet
DeepRed
WarmWhite4

素子構成は機種ごとに素子が変わっているはずなので参考程度にしてください.RX121sとRX201については公式で特に素子構成について触れられていません.公式の分光スペクトルを見る限りRX121sはRX122sとほぼ同様の構成のはずです.まさにミニRX122sといった感じでかなり使いやすそうです.RX201 freshは青がかなり強く,よくある水草用LED照明に近いスペクトルになっています.RX201 sunはかなり太陽光スペクトルに近くなってり,またどうやら赤外のLEDも使っているようで,公式でも謳われている通りどちらかというと観葉植物に良さそうですね.

いずれも演色性の高さとPPFDの高さが際立っています.水草は通常50-150程度でロタラもよく育つのでこれを直接あてたら強すぎます(笑. 実際は照明を高いところから吊るして使うのでここまで強度が出ることはありませんが性能面では十分と言えるでしょう.

パッケージにのっているスペクトルなど.幅広い波長をよく含んでいます.

私の所持しているRX122と新しいRX122sの比較では,光の強さは簡易照度比で約1.2倍になっていて,さらに調光も2chになっているので値段がほぼ同じなら素直に新しい方を買った方がよさそうです.色温度も9000Kと8000Kでそこまで違わないので混ぜて使っても問題ないでしょう.追加で購入するならRX122sかなという気でいます.

システムLED Grassy Solarとの比較

ボルクスジャパンからは現行で同じくスポットタイプのシステムLEDとしてGrassy Solar2が発売されています.こちらは消費電力70Wで,大体Grassy LeDio3台分くらいの出力がある計算です.さらに照射角が100度とより広いので,一台でより広い範囲をカバーできます.経験上は45センチ水槽くらいなら本機1台でも大丈夫かと.60センチ水槽は一台だと厳しいです.

機種名 発売日 消費電力 ビーム角 寸法(mm) 重量(g) 調光 値段(円)
RX122s 2022/6/15 23 W 60°±10% Φ120*127 445 2ch 20482
Solar 2018/10/10 70 W 100°±10% Φ109*H45 260 6ch 39670

こうして比べるとSolarの小ささが際立ちます.LeDioは放熱フィンで排熱するのに対してSolarはファン内蔵の強制冷却なのでその違いがでています.ただファンはそれなりにうるさいのでどちらが良いかはケースバイケースだと思います.また,SolarはシステムLEDらしく6chでの調光が可能です.実用上チャンネルごとに強度をカスタマイズすることはありませんが,アプリではケルビンや強度を直接調整できてそちらが便利です.3000-1200Kまでの調整ができるのでレイアウトによって自分の好みに調整できます.

  RX122s fresh Solar fresh
相関色温度(K) 8000 3000-1200
演色性(Ra) 95 97(max)
PPFD(μmol/m2/s)@30cm 560 252
JIS照度(lx)@30cm 32900 14140
簡易照度(lx)@30cm 35700 13000
素子構成 UV
Violet
Blue
Cyan
CoolWhite5
WarmWhite
SpecialWhite3
UV
Violet2
Blue3
Cyan2
Green
CoolWhite4
WarmWhite5

素子構成の比較は上の表の通り.こうしてみると照明30cm直下のPPFDや照度は消費電力が少ないにも関わらずLeDioの方が上で,照射角度でここまで変わるのかとわかって面白いですね.正直Solarも100%点灯だとブセが日焼けすることがあるので強度の問題はないと思います.前述の通りLeDioは広範囲を照らすのには向いていないので使い分けが肝心ですね.

システムLED GrassyCoreとの比較

最後に一応前回の記事で取り上げたGrassyCoreとの比較をやっておきます.

GrassyCoreは最大150Wの高出力をそなえ,より広い範囲を照射可能です.公式は90センチまで本機一台でカバーできるということでした.というわけでそもそもの対象が全然違うので比較と言ってもあまり意味がありませんがお付き合いください.

機種名 発売日 消費電力 ビーム角 寸法(mm) 重量(g) 調光 値段(円)
RX122s 2022/6/15 23 W 60°±10% Φ120*127 445 2ch 20482
Core 2016/10/10 150 W 120°±10% L365W170H33 1760 6ch  

Coreは照射角がSolarの100度よりもさらに広くなっていて,より広範囲を照らすことを重視した設計になっています.筐体サイズはこの手のシステムLEDにしては結構小さいように思います.システムLEDの良いところはスポットタイプに比べて高さがないところで,設置した時の見栄えの良さはこちらに軍配があがりますね.

出力150Wはこうして比較すると大きく感じますがADAのソーラーRGBが130Wなので大体そのくらいのレンジです.調光も6chでできて,Grassy Solarと同じくケルビンで調整できるのがめちゃくちゃ便利です.

  RX122s fresh Core fresh3
相関色温度(K) 8000 3000-20000
演色性(Ra) 95 97(max)
PPFD(μmol/m2/s)@30cm,15cm 560 1238
JIS照度(lx)@30cm,15cm 32900 73630
簡易照度(lx)@30cm,15cm 35700 59100
素子構成 UV
Violet
Blue
Cyan
CoolWhite5
WarmWhite
SpecialWhite3
UV
Blue6
Cyan4
CoolWhite8
NaturalWhite2
WarmWhite10

PPFDの値などはCoreは15cmでの値であることに注意してください.これはCoreの純正スタンドが高さ15cmだからです.正直このスタンドは高さが低すぎて使いにくかったです.

高さが違うとはいえ照度などはとんでもない値を持っていることがわかると思います.純正スタンドで出力maxで利用すると陰性植物やモスがすぐ焼けてしまうので,スタンド利用時はかなり出力を抑える必要があります.

以前の90センチ水槽ではロタラをふんだんにつかっていましたが,あれも60%出力のGrassyCore2灯で管理していました.現在90センチ水槽は一旦リセットして代わりに120センチ水槽を運用していて(ここら辺はまた別途記事にする予定),出力30-40%のGrassyCoreを4灯使って管理しています.本来は60%くらいの2灯で十分ですがブセの増殖のために極力影をつくりたくないのでこの運用になっています.あと数ヶ月くらいで2灯運用に戻したいです.

本機のようなシステムLEDの最大の問題点は,レイアウトが入り組んだ水槽で使うと1灯だと影が出来やすいことですね.なので90センチ水槽でも2灯使った方が水草育成の観点からは安心です.出力は抑えて使えるので機材の耐久面でも良いでしょう.120~150cmくらいの水槽までなら2台運用で大丈夫だと思います.

まとめ

現状発売されているGrassyLeDioシリーズをまとめました.次の90センチ水槽は訳あってGrassyLeDioだけで立ち上げてみようかと画策していて,4から6灯くらいあれば90cm×45cmの面積をカバーできると思うので楽しみです.現状古いRX122 フレッシュを3灯,サンセットを3灯所持していて,それで足りないようならRX122sかRX121sを追加で買う形になりそうです.立ち上げは来年になりそうなのでそれまでにお金を貯めなければ...

もし私のように60センチ以上の水槽でスポットLEDを活用したいと考えている方は,もしかすると小出力のものをたくさん用意した方がよいかもしれません.RX122は全灯だと水草水槽には高出力すぎるので,それだったら一台あたりが安いRX121sをたくさん買った方が良いのでは,という気がしますがどうでしょうか.また,最近はボルクスジャパン以外からもスポットLEDが色々出ているので,それらと比較検討するのも大事かなと思います.

地味に照明の設置方法はよく考えないといけません.全てクリップで設置すると見栄えが悪そうなのでダクトレールが活用できないかと思案しています.吊り下げ方式で照明を設置しようと思うと色々工夫が必要で大変です.特にクリップ式の照明はシステムLEDと違って綺麗に見せるのが難しい印象があります.ここらへんの試行錯誤はまた来年の楽しみにしたいと思います.それでは.

  1. Grassy Core/Solarもデフォルトで100%点灯するように仕様変更してほしいんですが厳しんでしょうね... 

  2. Grassy Core/SolarはLeDioと異なり台湾のHM electronicsとの共同開発だかなんだかで,調光アプリもGrassyLeDioとは別の(おそらく)HMが提供しているアプリを利用します.アプリの出来はこちらのほうが良い印象です. 

  3. ちなみに,HM electronics側のHPを見ると本機種に関しては利用している各素子のサプライヤーが乗っていました.気になる方は参考にどうぞ. 

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